Colors[カラーズ]編

Naked[ネイキッド]編はこのページ後半にございます


2種類の基本意匠

ジムニーの特徴的なボディカラー6色に、どうしてもラインナップに加えたかったネイビーブルーと臙脂(えんじ)の計8色には各々膨張色と収縮色の性質があり、それぞれに合わせた「2つの基本デザイン」を用意する必要がありました。収縮色系の背景に乗せるスケール(目盛)と数字フォントは細めの膨張色で、膨張色系の背景に乗せるそれは太めの収縮色であるべきだからです

 

ただ、この法則に則っただけではその意匠が全ての色にマッチするとは限りません。「アッチを立てればコッチが立たず」の繰り返しで、最終的に図の2つのデザインに辿り着くまでかなりの時間を要しました。

 

揺るぎない設計思想

別項でも触れていますが、これまで私が設計してきたメーターの意匠は自社ブランド用に100点前後、他社へのOEM供給用に十数種類。某国自動車メーカー純正メーターの開発協力なども経てきました。そんな中で私が一貫してきた信念、そしてOEM供給先や純正メーカーから評価されてきた部分、それは「奇をてらわないデザイン」です。

 

極端な目盛の形状や配置、珍しい数字フォントを変形させて配置することで「個性的なメーター」は簡単に描けますが、それは私の理想とする所とは全く逆で、「バランス重視で視覚的破綻が一切なく、その中に趣のある意匠」こそが最高の計器デザインだと信じて疑いません。数字や目盛で遊ぶのではなく、無個性なそれらを「いかに配置するか」がキモです。なかなかうまく言葉にできませんが「自然と眼に馴染み、なおかつ違和感(ツッコミどころ)が無い」という直感だけが頼りの理想郷です。



「ジムニーらしさ」の追求

第1デザインには「歴代ジムニーへのオマージュ」第2デザインには「現行ジムニーの洗練さ」を念頭に2種類の数字フォントとスケール形状を使い分けました。やみくもに昔の英国車風意匠やイタリアンスポーツの美しい意匠を持ち込んでもジムニーに似合ってなければ滑稽なだけですので、草案段階から完成まで最も追求に時間をかけたテーマです。

 

オリジナルフォント

1990年代後半頃、初期のCorelDRAWを駆使して作った基本フォントは私の財産で(同じ規則性を保持しながら0から9までの数字デザインするのはなかなかの苦労です)、後年そこから派生させた3種の数字フォントのうちの2種を採用しています。第1デザインの方には1960〜70年代国産車のメーターをイメージしたもの、第2デザインの方は製版カメラで手書文字を複写・印刷した仕様のフォントをイメージしたものを、それぞれに手を加えて最適化した上で採用しました。

 

スケール(目盛)

先述の「膨張色・収縮色」のルールに基づいた2種のスケールですが、ラダー(はしご)型とベルト(帯)型をそれぞれ採用しました(長年に渡って計器を設計していますので、勝手にこの類の愛称が生まれます。もちろん一般的な呼び方ではありません)。いずれも、背景色との親和性が高いだけでなく、夜間のイルミ発光時にそれぞれ個性を発揮してくれます。ちなみに、スケールは細かく刻めば刻むほどカッコ良くなりますが、Escapeesのコンセプトにはそぐわないので今回はグッと我慢です。



マイル表示は日本では不要?

輸出仕様の車両の一部(主に米・英・豪向けなど)では、速度計の内側にマイル表示が併記されますが、日本国内の車両には当然のことながら何も表示されていません。本来は照明のバックライトが当たる部分であり、言い換えれば「なんでも表示させることができる」ということです。

 

レトロアクティブでは、海外ユーザーに向けた意味合いと「計器としての情報量UP」を目的としてこの空白部分にマイル数値を刻みました。ただ、国内限定仕様の64型においては海外向けには用は成さず、完全なる「飾り」であったとも言えます(74用は世界中で機能しています)。

 

そこで、過去にロードスター用やBMW MINI用で私が積極採用してきたマイル表示は卒業することとし、Escapeesではこの部分にちょっとした「機能性表示」を入れることにしました(Colors[カラーズ]:BK-RDのみマイル表示)。それがこの「速度ガイド」です。

 

速度ガイドとは

図で示した通り、制限速度40〜60km/hの一般道を走る際の[常用域]と、100km/hまでの[高速域①]、100km/h以上の[高速域②]に区分する目安を色分けして表示します。

 

もちろん、常に指針がどの数値を指しているか注意して走行することが大前提ですが「うっかりスピード超過しないように瞬時に識別できる目安があったらいいな」という私が個人的に日頃感じることを具現化したのがこのガイドです(名古屋は道が広くて「ついつい」が起こりがち)。

 

おまわりさん対策ではなく、「一般道では黄色域はNG」とか、「高速道路で赤域は文字通りレッドゾーン」といった具合の「あくまでも目安」としてご利用ください。

 

無事故無違反・いつも安全運転のジムニー乗りでいましょう。



Naked[ネイキッド]編


レトロアクティブからの系譜

レトロアクティブと同じ「金属剥き出しの無骨感」がその特徴であるこのNaked[ネイキッド]シリーズ。これに採用する盤面意匠は膨張色と収縮色に関する縛りに囚われる必要がなく、「RetroActiveの新モデルを作るならば?」という発想に切り替えてデザインに取り組みました。

 

基本的にはColors用の第2デザインをベースにして数種類製作し、実際に試作を車両に取り付けて比較検討した結果この意匠に着地しています。

 

2種類の文字色設定

再三申し上げてきた通り、ジムニーはエンジンONにてオレンジ照明がつくため、あくまで「エンジンOFF時の佇まいの違い」のためだけに2種類の文字(とスケール)色をご用意しました。

 

いろいろと優しい?

半光沢の落ち着いたこの風合いは、圧延工程で表面にできる微細で美しい凹凸が作り出すもので、レトロアクティブのスピン加工とはまた違った「落ち着き」のようなものがその特徴と言えます。スピン加工を経ないぶん、レトロアクティブよりもお手頃な価格でご提供可能なのも売り文句のひとつです。

 



速度ガイドはこんな形で

Colorsの項目でご紹介した速度ガイドはこのNakedシリーズにも採用しています。前者のような色分けこそ無いものの、精緻な加工によりスリットを分割配置してガイドの役割を持たせました(ちなみにタコメーター側のスリットはダミーで、速度ガイドと同じ太さのスリットを配置することでバランスを整えています)。

 

悩みどころ

Colorsと同じくベーシックキットだけでもご満足いただけるよう設計しましたが、このNakedではニードルキャップとメーターリングを加えることでその魅力は何倍にも膨らみます(構造上カバーパネルは同時装着不可)。ただそのご予算であれば至高のレトロアクティブ導入がじゅぶんに視野に入ってくるとも思いますので悩ましいところでしょうか。

 

いずれにせよ、このあたりはぜひシミュレーターであれこれと悩んでいただきたい部分であります。