Escapees製品の各部の仕様・構成・こだわりポイントに関し、全デザイン・全設計を行った筆者(代表・ハタナカ)が以下に解説します。肩の力を抜いた論調で進めましたがなかなかのボリュームになっております。体力のある方は各リンク先の詳細解説もご一読いただけると幸いです。
オプション無しで完結する意匠
「RetroActiveはカッコいいけど高額で手が出ない、でもメーターは替えてみたい」という方々からのご要望に応えるための「廉価版」としてEscapeesを作ったのではありません。メーターリングやニードルキャップが無くても完結する意匠、パイロットランプがなくてもワクワクする警告灯の見せ方、つまり「高額になる要素」についてを徹底的に見直し、じっくり時間をかけて「手軽・上質・カッコいい(or可愛い)」を念頭に開発したのがこのベースモデル(ベーシックキット)たちです。
豊富なオプション・その組み合わせは4000通り超
もちろんオプションを加えていくことにより個性や質感は増していきますが、ベースモデルだけでも充分に満足してもらえるような製品を目指しました。「最初はベーシックキットだけ、オプションは余裕ができたら…」という考えでとりあえずトライするもよし、「いやいや、シミュレーターで悩み抜いた自分だけのメーターを!」と決め打ちするもよし、とにかく皆様のご予算に応じた「いくつかの選択肢」を設けたかったが故のベーシックキットなのです。
カラーバリエーションが楽しいColors[カラーズ]か、金属質感を味わうNaked[ネイキッド]か、あなたのジムニーにぴったりなモデルをぜひみつけてください。
ベーシックキットに〝着せる〟
カバーパネルとは、ベーシックキットの盤面と合体させることによって色を足したり金属質感を足したりするステンレス製のパネルです。
カスタムがどのような方向性になるかを大きく左右する部分(超絶クールにしたり可愛らしくしたり)ですので、ぜひシミュレーターにて色々とお試しいただきたいと思います。
純正色塗装の〝特別感〟
ベーシックキットではジムニーの純正車体色をイメージした「近似色」を採用しましたが、このカバーパネルの一部では「純正色そのものの塗料」を使用しています。
具体的にはジャングルグリーン(=カラーコード:ZZC)、ミディアムグレー(=同ZVL)、シフォンアイボリー(=同ZVG)の3色で、ステンレス素材に純正同様の焼き付け塗装を施しています。ただし、トップコート(クリヤー層)はないので質感はマットに近い半艶となります。このため、純正ボディと並べた場合にはクリヤー層がないために「全く同じ」というわけにはいきませんが、「ボディと同じ塗料!」という特別感は絶大です。
独自調色2種と珠玉のメタル質感
この3色に加えクリムゾンレッド(臙脂)とJPネイビー(日本古来の紺色染料に由来)をEscapees独自調色にてご用意しました。また、金属本来の質感を楽しめる半光沢仕上げSUS304ステンレスと光沢仕上げSUS304ブラックステンレスに加え、RetroActiveでご好評の光沢スピン仕上げもありますのでぜひお好みに応じてチョイスしてください。
もっとも視界に入る部分
センターパネルとはメーター中央の液晶部分に被せるパネルのことで、液晶の情報のみならずウインカーや前照灯の状態、駆動形式を示すアイコンなど、日常の運転時にもっとも情報を得ることになる部分です。
ここをカスタムする効果は大きいので、Escapeesではベーシックキットにステンレス製センターパネルを標準付属としています。
パイロットランプに代わるもの
RetroActiveの最大の特徴のひとつであるセンターパネル部のパイロットランプ群にはとにかく手間と費用がかかっています。「お手頃価格のEscapees」を実現するにはコスト面で断念せざるを得ませんでした(何より、RetroActiveを選んでくれた方々への道義上の想いが強い)。
代替案として、私が過去に他車種で手がけたような「文字(LIGHT等)+インジケーターランプ」という手法で逃げてしまえば簡単なことだったのですが、あまりにも面白みに欠けるし何よりそれでは車検で問題になりかねない…。1年近くこのことだけを悶々と考えた結果に思いついたのがこの「ステンレスメッシュ越しに浮かび上がるドット絵風のアイコン表示」です。
職人泣かせの極微細加工
0.3mmのステンレスパネルへ直径0.25mmの穴を寸分違わず配置するという加工現場泣かせのこの変態的仕様なのですが、苦労した甲斐あって最高のものに仕上がりました。普段見慣れた面白味のないアイコンたちも、こうやって見るととても可愛く思えるのが不思議です。
このセンターパネルは「ベーシックキットに標準付属」しますが、カバーパネル同様に色を変えたり質感を変えたりと各種バリエーションを取り揃えておりますのでぜひお好みのものを探してみてください。
産みの親としてひと言
余談ですが、現在一般的に使用されている「ニードルキャップ」という呼称、日本で最初にそう名付けて販売したのは2004年当時の私です(NAロードスター用)。それまで世間では「指針キャップ」と呼ばれていましたが野暮ったいので新たな呼び名を考えたのです。
そもそも、針に被せるキャップではなくて針の基部に被せるキャップなので「ニードルキャップ」も本当はおかしいんです。正確には「指針基部キャップ(The cap for base of needles)」ですがまず浸透しないと考えて「ニードルキャップってちょっと変だけどまあいいか」と断腸の思いで付けた当時の記憶が蘇ります(でも今、アフターパーツを販売する会社やヤフオクでもなんの迷いなくこう呼んでいてとても不思議な気分です)。
金属>樹脂メッキ≧純正>>>カラー
さて、RetroActiveでは金属製を標準付属としていましたがEscapeesではオプション設定です。純正ニードルもなかなか凝った造りなので「そのままでいい」という人向けの配慮です。ただ、純正は少し小ぶりな印象があり、そこを適正な視覚的バランスとすべく設計してありますのでご予算の許す方はぜひ同時装着をお薦めします。
また、金属製よりお求めやすいABS製の「クローム」と「ブラッククローム」を新規で設定しています(当初はカラーバリエーションの試作をしたのですが、ここをカラーにすると急に安っぽくなる、というか後付け感が急激に強まるためお蔵入りとしました。あくまで私の主観ですが「ここはモノトーンであるべきだな」という結論です)。
これがマストのレトロアクティブ
RetroActiveでは「メーターリングありき」で製品設計をしたので〝同時装着して初めて完成形となる〟旨の説明をしてきました(とは言え、ご予算の関係や他社製のリングを既に装着している場合を鑑みてリング無しのキットも設定しています)。しかし先述の通りEscapeesにおいては「オプション無しでも完結」するようデザインしていますので選択は皆様の好みに委ねられています。似合うか似合わないかはカスタムの方向性によります。
このサイト内やインスタに投稿した画像群を見て「カッコいい!」とお感じであればぜひ同時装着をご検討ください。
一切の無駄を削ぎ落とした形状
メーターの設計を25年近くやってますので、それに付随してリングの設計も相当数手掛けてきました。材質のみならずC面形状や接地部分のあしらいに拘ったりと、様々なリングを設計してきました。しかし結局のところ「シンプルこそ正義」とばかりに、過度なアピールをしないこのラウンド形状に辿り着きました。詳しい開発経緯はRetroActiveで語った内容をそのまま転載しておきますのでぜひつづきをご覧ください。
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夕暮れ以降の愉しみ
ジムニーの場合エンジンON時点でメーターのオレンジ照明が点きます。文字・スケール色がアイボリーでも赤でもスモークでも、若干の色調差異こそあれオレンジです。夕方以降運転していると、時間の経過とともにそのオレンジ色が際立ってきて、日没後にはクッキリと浮かび上がります。Colorsを選んでもNakedを選んでも、夜はこのオレンジ照明が主役となってメーターを演出します。
その照明にこだわったのはRetroActiveの時と同じ(もしくはそれ以上)で、それは各製品ページに掲載した照明点灯イメージGIFアニメーションでご確認いただけます。
「夜間の照明なんて意識したことなかった」という方は、ぜひEscapees導入をきっかけにイルミネーションを楽しむ喜びを実感してください。
街灯反射との調和
ベーシックキットにメーターリングやニードルキャップといった金属のオプションを加えた場合、さらに夜間のムードは高まります。街灯や他車のヘッドライト、信号機の光などを受けて「キラリ」と輝く光景に思わず笑みがこぼれることでしょう。
小さなこだわり・大きな反響
モノトーンのストイックさと無骨さを前面に押し出したRetroActive製品ですが、「アイコンがジムニーの車体シルエットになっていて可愛い」と大きな反響を呼びました。「頑固一徹でいつも無口な伝統工芸職人の好きな食べ物はクリームたっぷりのチョコバナナクレープだった」的なギャップはいつの世も人々のハートを射抜くようです。Escapeesでももちろんこの意匠を採用(しかもレトロアクティブ用よりも数%大きくしてあります)。
常に点灯しているものでもないので、そのレアキャラ感をぜひあなたの車内でも楽しんでみてください。
ブランドロゴを頑なに入れない理由
ある意味「逆説的な遊び心」と言えますが、私はこれまで手がけてきた製品群に社名やブランド名・ロゴマークを一切入れていません。大昔の話ですが、個人製作品のアフターパーツに刻まれていたナンセンスなロゴをみて「おまえ誰やねん、知らんし」と感じてしまった自分のあの頃の気持ち(製品は素晴らしかっただけに尚更)がずっと頭から離れないのです。
どれだけブランドが世間に認知されようと、入れたくないものは入れたくない。「後付けパーツですよ!」とわざわざ負のアピールをするよりも、パッと見「純正?」と思われた方が僕は幸せなのです。
メーカー純正品レベルの「隠す技術」
ここで言わなければ気づかないレベル、というか誰もそんなこと気にしないであろうこだわりですが触れておきます。昔の軽トラや商用車などいわゆる「デザインよりも実用性重視」の車のメーターでは「光っていない状態でも警告灯のシルエットが丸見え」で、それらが散らばったメーターはとても雑多にみえます(下の写真参照)。
コストがかかる
「光っていない状態では何も見えない」ようにするには印刷工程が増えたり材質が限定されるため生産コストを重視する場合は妥協する必要があるのです。昔よくあった社外品ELメーターなどはその好例で、光っていない警告灯のシルエットがあっちこっちにあって興醒めしたものです。「言われてみれば確かに」というレベルのお話ですが、海外の純正メーター開発に関わった際、そこはとても厳格だったのが印象的でした。
せっかく替えてもらうのだから
日々のドライビングをより楽しむため、様々なカラーや材質を組み合わせて〝自分だけのメーター〟にしていただくのですから「できるだけ邪魔なものは排除しておきたい」という考えはデザイナーとして当然のことだと思っています。もしEscapeesを装着した際は、純正レベルのこんなこだわりにも目を向けてもらえると嬉しいです。
サポートダイヤルが鳴らない
豊富な写真と詳しい解説に加え、動画解説へのQRコードも配したRetroActiveの説明書には「万が一のサポートダイヤル」も記載しています。しかし、驚くほど電話が鳴りません。1000基以上販売しているはずなのに…です。これは、ほとんどの方々が説明書と動画だけで施工を完了させている証です。これを元にさらに加筆修正した説明書をEscapeesでも同梱しますので、「取り付けだけが不安…」という方はどうかご安心ください。
気持ちよくハマるフィッティング
意匠やカラーバリエーション、質感だけでなく「純正オプションクラスのフィッティング」も深く追求した部分の1つです。うまくはまらない、少しズレる、隙間が空く…等々は決してあってはならないのです。「ピッタリはまる」「美しく仕上がる」ことだけを追い求めて純正メーター筐体を厳密に採寸し、3Dモデリングと3Dプリンタによる出力品を何パターンも考察した上で製品化していますのでフィッティングはバッチリです。後付け感がないこと、純正に戻すことを前提に穴あけや特別な配線加工を必要としないこと、なども徹底しています。
25年の集大成
大学時代の1999年、「自分用」に内装パーツをデザイン・設計し始めてから四半世紀が過ぎようとしています。別項でも述べた通り、これまで描いてきたメーターの意匠は自社ブランド用に100種前後、他社へのOEM供給用に十数種類、某国自動車メーカー純正メーターの開発協力などもしてきました。
「計器デザイナー」なんて肩書きは世に存在しませんが、あらゆる計器(自動車用以外も含む)と睨めっこしてきた上で得た知見にはそれなりの自負があります。
そんな中「これまでの集大成」と勝手に位置付けて準備した今回のEscapeesですが、おそらく私にとって最後のブランドになるような気がします(今後ジムニー以上に惚れ込むクルマが登場するとは思えない)。「作れば売れそうだな」という下心で、乗ってもいない車の部品は作れないし作りたくもありません。
ジムニー仲間の応援を糧に
製品企画・開発・設計・ブランディング・写真撮影・動画編集・SNS管理に検品・梱包・発送・アフターフォローまでの全てを私が一人で担っています(サポートスタッフに委ねているのは「もしもの時」に備えた顧客対応とお金の管理のみ)。誰にも任せられない・任せたくない・自分で全部やりたい、というワンマン経営の悪しき典型です。でもどうしようもないんです。「効率重視で利益優先」なんかより「自分の美学と信念・こだわりを貫き通す」という部分に妙味を感じるこの性分はいまさら変えられません。そんな実情ゆえに毎日やることが満載で全く気が抜けませんが、「素晴らしい製品をありがとう!」なんて感謝の言葉をいただけるこの仕事はまさに天職だと感じています。
ブランド名に込めた想い
そもそもEscapeesとは「逃げ出す者」「逃亡者たち」といった意味で、普段の生活の中で窮屈に感じたり負担に感じたりする事象から「一緒に逃げ出そう!」という意味を込めてつけたブランド名です。どんなに疲れていても笑顔で微笑み返さないといけない場面、誰にだってあるはずです。だからこそ、せめて好きなクルマに乗っている時ぐらいは「あなたの色」でいてほしい、そんな想いを込めたブランド名なのです。私自身も「レトロアクティブ」という枠・呪縛・制限などから逃げ出すことで、今まで諦めていたアイディアや手法をこのブランドの製品に込めることができました。
もしあなたのジムニーにレトロアクティブやエスケーピーズのメーターを装着してもらえるご縁が無かったとしても、同じジムニーを愛する者たち同志の絆で繋がっていると信じています(綺麗ごと、ではなくて)。ジムニーを通じて結ばれているこのご縁を、これからも大切にしていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
皆様のジムニーライフが
より楽しいものになりますように。
2024年6月吉日
Escapees・ハタナカマコト